法人が入院給付金を受け取ったとき

 令和元年に法人税法上の保険料の取り扱いが大きく変わって以来、役員勇退時の退職金の備えを目的として保険を活用する場合に、節税面でのメリットはあまり得られなくなりました。

一方、医療保険等のいわゆる第三分野保険についても、主に解約返戻率によってその保険料の税務上の取扱いが定められましたが、そのうち最高返戻率が70%以下でかつ年換算保険料相当額が30万円以下の場合には、資産計上する必要がなく、期間の経過に応じて損金に算入する扱いとなっています。

 

入院時などの保障を求めて、そういった保険の法人契約を検討されることがありますが、実際に契約されたのち、被保険者である従業員や役員が病気やケガなどで入院されたときに、会社が受け取った入院給付金の税務上の取り扱いはどうなるでしょうか。また従業員または役員本人に対しては、どのように支給することができるでしょうか。

法人が受け取った入院給付金と見舞金の取り扱い

法人が従業員や役員のために医療保険に加入している場合、従業員または役員が病気やケガで入院した時には、保険会社から入院給付金を受け取ることになります。

もともと従業員や役員の入院費等の保障と考えて加入したので、そのままお見舞金として支払うのでは、と考えられがちですが、そこには注意が必要となります。

 

まず、法人が保険会社から受け取った入院給付金は、法人にとっては課税対象の収益になります。会計処理としては、勘定科目「雑収入」を使って計上するのが一般的です。

 

一方、従業員に見舞金を支払った場合は、勘定科目「福利厚生費」で処理することになりますが、その金額が多額であった場合には税務上は「給料」とみなされます。

「福利厚生費」が「給料」となっても、法人の経費に違いはないですが、従業員本人には所得税が課されてしまいます。

 

役員に見舞金を支払った場合も「福利厚生費」となりますが、金額が多額であれば役員賞与となり、役員本人に所得税が課された上に、税務上は一定のものを除いて法人の損金になりません。

 

なお、見舞金を特定の役員や従業員のみに支払っているような場合も、福利厚生費とはなりません。そのため慶弔見舞金規程を作成し、一定の支給条件を定めておいた方が良いでしょう。

見舞金の基準は「社会通念上相当とされる金額」

慶弔見舞金規程で定めていてもその金額が多額であれば、やはり給料とみなされてしまいます。

税法上は「社会通念上相当とされる金額」であれば、経費として認められています。

では、社会通念上相当とされる金額というのは、いくらかというと、法人税法では具体的に定められていません。

しかし、平成14年6月13日に裁決された国税不服審判所の判例によると、福利厚生費としての見舞金の上限は、入院1回あたり5万円が相当と認定されており、通常はこの金額程度が「社会通念上相当とされる金額」と考えられています。

 

税務上の考え方としては、受け取った給付金と支給する見舞金とは何ら関係がなく、それぞれ別々に取り扱うものとなっています。安易に考えて後々後悔することのないよう、保険の活用には注意が必要です。

 

 新型コロナ感染症の収束は一向に見えず、厳しい残暑が続いていますが、もう8月も終わろうとしています。今年は本当に大変な年になりました。

少しでも早い回復を祈るばかりです。

 

 後藤百合子

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